物理学のテイストを盛り込んだSF作品はたくさんありますが、その中には最新の理論を大胆に盛り込んだものがあります。まさに物理学の新たな展望、新境地を拓くことを目的としたような作品。そんな優れた作品の中にはSF界に衝撃をもたらし、さらに科学の世界にさえ革命をもたらすものもあります。
そんな名作のひとつに弓月城太郎の『神秘体験』も数えられます。この作品では「精神波量子脳理論」という壮大な理論が提示されています。これは生命の神秘はもちろん、超常現象から死後の世界までを網羅する驚くべき理論体系なのです。
SF小説の中で物理学の理論を取り扱うためには単に物理学の知識だけを持っているだけでは成り立ちません。さまざまなアプローチから理論を説明付ける該博な知識、それから物理学の初心者の読者も納得させられる説得力が必要です。それがうまくいかないと大風呂敷を広げるだけで読者はまったくついてこれない独りよがりの作品ができあがってしまいます。
しかし『神秘体験』においては弓月城太郎はその博学ぶりをもってその難関を克服することに成功しています。その深遠で壮大な理論は読んでいると知らず知らずに引き込まれていきます。
それだけでもSF小説として優れた条件を備えているにも関わらず、さらにストーリーの充実が作品の質を高めています。とくに主人公の柚月恭司と妹恭子がフィギュアスケートで活躍するシーンはその題材の珍しさもあって多くの読者にアピールするのではないでしょうか。
科学が生んだ科学を超えたSF。弓月城太郎の『神秘体験』は科学とSFの世界に新境地を拓く可能性を秘めた名作といえそうです。
作品はこちらで無料公開されています→
http://yuzukijoutarou.3rin.net/
科学小説